· 

パナマ運河に忍び寄る気候危機 降雨の減少で航行する船が大幅減少

パナマ運河 Photo by Victor / CC BY-NC-ND 2.0 DEED
パナマ運河 Photo by Victor / CC BY-NC-ND 2.0 DEED

ガザ紛争によって不安定化したスエズ運河を回避し、喜望峰を経由する大型船が増えている。その結果、商品の到着が遅延し、コストにも影響が出ることが懸念されている。


ここにきてスエズ運河と並んで2大運河と言われるパナマ運河の運行についても心配する声が上がっている。どういうことか?


大西洋と太平洋をつなぐパナマ運河が完成したのは1914年。南アメリカの南端を回る危険なルートを回避し、13,000kmの航路短縮を可能にした。


パナマ運河の運行を支えるのは人工湖レイクガトゥンからもたらされた大量の水資源だ。この水によって船が海抜26mにまで持ち上げられ、運河を越えていく。一隻の船が通るたびに2億トンの水が使われ、海へと流されていく。

レイクガトゥンはもう一つ大きな役割を担っている。パナマ国民430万人の主要な水がめであり、半数を越える人たちがこの水に依存して暮らしている。この湖に豊かな水がたたえられていることが、パナマ運河にとっても、パナマ国民にとっても何よりも重要なことなのだ。


パナマは世界を代表する多雨地域であり、これまでは大量の水資源に恵まれてきた。それが変わったのが2023年、エルニーニョ現象によって降る雨が減少し、レイクガトゥンの水位が減り続けた。現在の水位は雨季の最低に近づいており、日量30億トンの水が不足していると言われる。


通常パナマ運河を通る船は36隻。それが現在は22隻に制限され、2月までには18隻になるだろうと言われている。パナマ運河の出入り口にあたるエリアには航行を待つ船があふれ、ニアミスも起きるような危険な状態になっている。


エルニーニョ現象によって雨が減少するのはこれまで20年に一度程度だった。だが、この26年の間に3度の減少を記録。降雨のパターンが変わってきたことが懸念されている。


パナマ運河は水という自然資源を有効活用して人間の暮らしを豊かにしてきた。だが、その豊かな暮らしを続けてきたがゆえに、大切な水資源の不安定化を余儀なくされている。


止まらない気候危機がこれから何をもたらすのか。その被害からは誰も逃げることはできない。


<参照リンク>

Changing climate casts a shadow over the future of the Panama Canal – and global trade


翻訳・文 / エコロジーオンライン編集部

www.eco-online.org Blog Feed

【EOL+AI】音楽とチェダーチーズが交差する?草の上でロックフェスが開催 (水, 10 7月 2024)
>> 続きを読む

【EOL+AI】人間による絶滅危惧種の増加 vs 人間による保護活動 (Tue, 09 Jul 2024)
>> 続きを読む

【EOL+AI】現代人のメンタルヘルスが危ない?!加速する気候変動の弊害 (Fri, 05 Jul 2024)
>> 続きを読む

【EOL+AI】気候変動が子供の脳損傷に関連か 主な被害者は貧困層 (Thu, 04 Jul 2024)
>> 続きを読む

【EOL+AI】気候変動が健康に悪影響を及ぼす?!猛暑による体への多大なリスク (Wed, 03 Jul 2024)
>> 続きを読む

【EOL+AI】亜酸化窒素排出量の急激な増加が気候変動を加速させる?!軽視できない亜酸化窒素の実態 (Tue, 02 Jul 2024)
>> 続きを読む

【EOL+AI】迫り来る『終末の氷河』消失へのカウントダウン (Mon, 01 Jul 2024)
>> 続きを読む

【EOL+AI】ネコ科の動物史上最大の回復!スペインオオヤマネコ、絶滅の危機から脱する (Fri, 28 Jun 2024)
>> 続きを読む

【EOL+AI】毎日約2,000人の子どもが大気汚染により死亡していることが判明 (Mon, 24 Jun 2024)
>> 続きを読む

【EOL+AI】気候変動でホッキョクグマが10年以内に絶滅の危機に?! (Mon, 17 Jun 2024)
>> 続きを読む

«一つ前のページへ戻る