地球温暖化によって北半球の夏には大規模な森林火災が起こることが多くなった。現在、カナダを大規模な森林火災が襲っており、地球は「火の世紀」に入ったと宣言する研究者も出てきている。
これまで北米の森林は自然のサイクルを保って火災を起こして更新を繰り返してきた。自然を開発することで、人間の暮らしが森林に近づき、起こるべき森林火災を防いできた。少しづつ森が燃えていればそこが緩衝地帯となって延焼を防ぐ。緩衝地帯を失った森林は地球温暖化によって乾燥が進み、燃料庫のような存在になった。そのために森林火災が起こると手のつけられない状態になる。何度かこうした火災に襲われた森林は再生せず、サバンナのような状態になると指摘する研究者もいる。CO2を吸収する森林が失われ、温暖化がさらに進んでいく。
こうした現象をポジティブフィードバックと呼び、加速度がついた温暖化を止めることができなくなる。これをティッピングポイントと呼ぶ。nature sutainability に発表された研究によれば、すでにティッピングポイントを迎えたと見られる事象が20を超え、生態系の20%以上が後戻りができない状態に向かっている可能性があると指摘している。
こうして生態系の崩壊は想像より早く訪れることがわかってきた。人間はさまざまな形で自然を破壊し、生態系にストレスを与えてきた。そこに気候変動がもたらす異常気象が襲う。その結果、ティッピングポイントが8割早く訪れる可能性もあるという。
一つのポジティブフィードバックが他の分野のフィードバックにつながり、死にいたる悪魔のループを形成する。その結果、今世紀末までに予測された生態系の崩壊がここ数十年の間に起こる可能性があるという。
経済であれば誰かが資金を供給すれば危機を回避することができる。だが、自然の世界にそうした救済策はない。生態系の崩壊を防ぐことはかなり難しいようだ。
<参照リンク>
‘The fire equivalent of an ice age’: Humanity enters a new era of fire
Ecological doom-loops: Why ecosystem collapses may occur much sooner than expected
翻訳・文 / 上岡裕