エコロジーオンラインの省エネ担当コーディネーターの吉田登志幸です。
SDGsはわたし自身も勝手に「世界憲法」と名付け、地球上のありとあらゆる人が考えなくてはならないものだと思っています。
その一方で、確かに目標が大き過ぎて賛同は大いにするが自分自身は何をどうしていいか分からないという人がほとんどではないかと思います。
実はわたしもその中の一人。
故に、生活していてどこかの場面でSDGs貢献できる時が来れば、そこで自分ができることをやれば良いのだと。
そこで、生活していて、非常にSDGs貢献ができる場面があります。それは自宅を建てるとき。しかも、これからお伝えする“ある建て方”をするとSDGs17目標すべてに貢献できると言えば驚きませんか!?
以前に朝日新聞デジタルさんの「2030SDGsを考える」というサイトでこの件について4回シリーズで連載をさせていただきました。
“ある建て方”とはどういう建て方かと言いますと、ずばりZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)です。
この名前は最近では少しずつ浸透しつつあるように思えますが、一言で言えば、住宅を高断熱化して、最小限のエネルギー使用にしつつ、足りない分は再生可能エネルギーで賄おうという住宅です。
再生可能エネルギーと言ってもたくさんありますが、ここでは太陽光パネルが100%に近いのではないでしょうか。
第1回目の連載では、さりとて単に太陽光パネルをたくさん乗っけましょうという話ではなく、まず重要な家の断熱スペックを限りなくあげなくてはならないのだと。
エネルギーのことももちろん、目標③や④に関しても高断熱化された住宅が根本的に寄与すると、それと⑦。これはすぐわかりますよね。
https://miraimedia.asahi.com/yoshidatoshiyuki_column01/
第2回目の連載では、目標⑧にも重要で、健全な住まいで心身ともに健康であれば色んなことにも意欲的に取り組める。
更に目標⑨でも日々進化するZEHをつくることで促進されますし、目標⑪でも心身ともに健康な住まいで前向きになって自分の地域コミュティを好きになることができて、積極的により良いコミュニティーづくりに参加するようになると。
https://miraimedia.asahi.com/yoshidatoshiyuki-column02/
第3回目では、目標⑫。わたしはこの目標が一番好きです。なぜなら原因があるから結果がある。諸悪の根元の元さえなければ悪い結果も起こらないわけで、そういういみでも特に“つくる責任”でしっかりとしたZEH住宅をつくることが非常に大事ですし、もちろん、建てる人も“つかう責任”において正しいZEHを選択する必要があるんだと。
目標⑬もわかりやすいですね。気候変動を考える上でもCO2を限りなく排出しない家が必要不可欠!さらに、戸建住宅であれば木造1択だと。なぜなら目標⑮に大きく寄与するから。そして山の健全化が海の健全化につながるので目標⑭も。
https://miraimedia.asahi.com/yoshidatoshiyuki-column03/
最終回では,「正当な時間」「正当な報酬」「正当な仕事内容」という“正しい雇用”が残りの目標をクリアさせることができると、ちょっと最後はいさかか強引ではありますが大きく外してもいないと思います。
そして、すべてを総括すると、目標⑫のつくる責任、つかう責任でZEHを選択しないことにはこの構想すべてがもろくも崩れてしまうのです。
原因があるから結果がある。良い原因なら良い結果に。悪い原因なら悪い結果に。つまり、ZEHを選択しないならSDGsも目標達成できないのだと。
https://miraimedia.asahi.com/yoshidatoshiyuki-column04/
理屈はわかるけど、やはりそれだけ通常の家よりもコストがかかってしまうから現状ZEHも国は推進していますが、なかなか伸び悩んでいるところではあります。
そんな現状に大きく変える制度を鳥取県がつくったのです。
それがとっとり健康省エネ住宅性能基準(NE-ST)“とっとり版HEAT20”。
コストアップ部分を住宅性能に応じて助成金(とっとり住まいる支援事業)を出すようにしたのです。しかも、すでに本家の水準「HEAT20」をそのままのお手本にしているので、内容に対する研究の時間がゼロ。また、多くの住宅関係者も納得する水準で反論の余地なしです。
鳥取県の素晴らしいところはこのHEAT20を基準にしたところです。これがその他のものですとこんなに早く誰もが納得する制度はつくれなかっただろうと。
そして、税金を投入するわけですから大義名分(表現おかしいかも)が当然必要です。
鳥取県がこの画期的な制度にふみきった理由に制度のきっかけをつくった鳥取県地球温暖化防止センター・副センター長の山本ルリコさんによると、
- 健康維持増進のためには寒い家は危険。ヒートショックのない家が重要
- しかし、現状鳥取県は光熱費が全国平均よりも高く、そのお金は県に落ちず最終的に海外へ流れてしまっている
- そのためにも住宅の高気密高断熱化は必要不可欠
というような背景から2020年度からスタートしました。
とっとり住まいる支援事業の内容を整理すると、
- 断熱基準をHEAT20にしている
- 気密の基準も1㎠/㎡以下にしている
- 県産材使用促進で更にお得に
制度の詳細はこちらをご覧下さい。
専門の人間としては特に②の気密性能もしっかり要求している所にあります。国の基準は平成11年にこのとても重要な気密の項目を外すという残念な判断があっただけに意義深いことこのうえありません。
ZEHを助成するものではありませんが、この助成は非常にありがたいはずですし、ZEHに二の足踏んでいた人たちの背中を大きく押すものであることに間違いありません。
そうなれば“正しい”ZEHが建てられSDGs目標⑫からスタートが切れるわけです。
更に更に「とっとり版HEAT20」が素晴らしいのはどの都道府県でも全く同じ制度ができるということなのです。
先にも挙げた通り、基準がすでにできていて、あとは予算と人員とオペレーションを検討するだけ(だけって言ってしまうと語弊があるかもしれませんが)。
2050年ゼロカーボン宣言を出したはいいが、何から手を打てば良いかわからないという都道府県はまず鳥取詣でをするべきです。そしてそこから改善点を見つけ更にブラッシュアップをさせニッポン一丸となってこの喫緊の課題に果敢にチャレンジしなくてはならないと思います。
文 / 吉田登志幸
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