共創・協働で生まれる豊かなSDGs社会
SDGsがこんな風に話題になる前にある自治体から、市民との協働について講演をして欲しいとお願いされたことがあります。市民の方を対象にした講演会でしたが「市民向けだけじゃダメ。自治体の職員も市民と一緒に動く練習をしないと」とお答えしました。「確かにそうかもしれない。担当者によって対応がまちまちでどうしたものかと・・・」と答えが返ってきました。
企業の場合はSDGsの取り組みをしてブランドイメージがあがれば商品やサービスの売上につながるし、投資や就職にも有効に働く。自治体の場合も同じような効果があるはずですが、企業のように自分の出世につながりづらいために職員の方もめんどくさい仕事はしたがらない。その結果、企業のようなSDGsの生態系は生まれていません。
SDGsに成功している自治体は、首長の強いリーダーシップがあるか、仕事の枠を超えて頑張りたいと思う担当者、もしくは自治体を動かせる外部の方が存在するかだと思います。そのせいで前述のような言われたことをそのまま伝えて、相手に勘違いをさせるようなことが起きてしまうわけです。
相手の事業をしっかりと把握して協働するスタンスがあれば、現在の事業にさらなる価値を与える形でコミュニケーションが進んだはずです。
縦割り社会がSDGを難しくする
もう一つ、縦割りの存在も厄介です。SDGsは17のゴールがあって一つが達成されても終わりではありません。他のゴールとの同時解決を目指しながら進めていく形になります。特に行政という組織の場合は縦割りの弊害が大きな課題として存在します。
17のゴールの一つにあたる地球温暖化の対応を一つとっても、普及啓発は環境省、エネルギーは経済産業省、森づくりは林野庁といった具合に担当省庁が多岐に渡ります。同じ地球温暖化対策でも実行予算はそれぞれの省庁が管轄します。
エコロジーオンラインでも環境省との協働を手がけていたことがありますが、地球温暖化と循環型社会の推進という私たちにとっては同じ環境の分野の取り組みもなかなか一緒に行うことができません。同じようなイベントをやるなら個別にやるより一つにまとめてしまった方が多くの人に情報を届けられるのではないかと話をしても、他の目的を混ぜると会計検査院からチェックされるので難しいという返事が返ってきました。
私たちの大切な税金を使う事業ですから、不適切な支出は控えないといけませんが、様々な課題がつながって変化する現状を考えると、SDGsへの対応がかなり難しい部分が存在するのではないかと思います。
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文 / エコロジーオンライン理事長 上岡裕
エンタテインメントだからつながる人・未来がある!
日本でいち早く地球環境問題への取り組みを始め、音楽や森を活用した認知症予防など、多岐にわたった活動を続けるNPO法人エコロジーオンライン理事長の上岡裕が、初めてその人生を語る。